大いなる文脈と、君の物語

私はそのストーリーテラーになろうかな

2021年私が読んだ神マンガ大賞

卒業ギリギリダービーの中、主に通学路などでこのブログを書いています

 

ブログにするまでもない文章もぷらいべったーになら投げられるぞと気づいてから、ジャニーズのことに限らず色んなものの感想を書き残してきました 今年は特に就活からの逃避のために無心になれる時間が欲しくて結構書きました (というかほぼジャニーズ以外だったよね)

 

映画やMVについても書きましたが(ってほど書いてないけど)、特に絶対残そうと思ってたのは漫画

元々漫画めっちゃ好きだし、書き留めると考察も進むし、あとTwitterの相互フォロワーさんたちが結構漫画好きが多いしあわよくば読んでくんないかな…っていう下心もあります

中学生の時に書評ブログの真似事をしていたのですが、今のほうが確実にいい感想が書けるだろうっていう、黒歴史の改稿?上塗り?更なる恥の蓄積では?も目的にあります(書く前はこう思ってたけど、書評ブログを読みあさってた当時のほうが良い紹介文書けてたと思う)

そんなこんなで、推敲してはてブロに残そうと思ってたけど結局そんな余裕ないまま放置してた文章が結構ありました

 

ですが!年末!!というわけで!!さっくり全部を紹介する記事を書こうと思います!!

 

 

 

 

神章部門「秘密 -TOP SECRET- season 0」

死者の脳を取り出し、その死者が生前見た記憶を見ることができるようになった近未来、「科学警察研究所 法医第九研究室(通称:第九)」では、被害者の脳の記憶を使って凶悪犯罪の捜査を行っていた

主人公・青木は最先端の捜査ができることに期待で胸を膨らませ配属されるが、「 凶悪犯罪解決のため」という大義名分の元、犯人や被害者、その周囲の人々の知られたくない「秘密」を暴いていくこととなるーーー

前章「増殖」編では、一度滅びたと見られていたカルト宗教が実はまだ生きていて、信者の起こした大規模テロにより水面下で「増殖」していた狂気の姿が明らかになった 青木たち「第九」の活躍もありカルト教団は壊滅した

ーーーと思われたが……

教団が児童養護施設で育てていた子供たちは全国に散り散りになり、教団で植え付けられた狂気を「悪戯」感覚で発揮し、残虐な事件を次々と起こしてしまう


あらすじ長…………!!!!!!!

 

今年とか関係なくいつでも推してるけど…!!

今年は「悪戯」編というストーリーが完結しました それがめっちゃよかったので神章をありがとう!という気持ちを込めて!ルールは自由!!

 

悪戯編だけで約3年間連載してました

前章である「増殖」編のスタートは2016年のようなので5年かかっての完結でしょうか(間に「冬蝉」編も挟んでますが……)

「増殖」編スタート時には絶対「悪戯」の構想もあったと思うので、先生お疲れ様でした……という気持ちでいっぱいです

正直これを超えるほどの作品があるのか?と不思議でたまらないのですが、超えてくるのが清水玲子先生っすよねェ………

 

あらすじにも登場した、カルト教団に育てられた子供たちは本編前半で残酷な事件を「悪戯」のように起こします

事故にも見える事件、「無知な子供の起こしたことだから」とギリギリ裁けないラインを攻めています

 

ここで主人公サイドの意見が割れます

主人公・青木は圧倒的光属性(青木もそれなりに事件には巻き込まれてるはずなのになんやかんや青木は光属性側として描かれてる…?)で、小学生の姪の舞を溺愛しほとんど自分の子として育てています そんな立場もあって子供は守られるべきだと主張

一方上司の薪さんは、両親が幼少期に死去してたり両親絡みで色々あったり*1、殺人鬼に歪んだ愛情を持たれたり、親友がその殺人鬼絡みで自殺したり*2とギチギチの闇属性 子供だろうが残虐性があることには変わりなく裁かれるべきだと主張します

 

これ、読者側もかなり分かれるんじゃないかと思う

明らかに育った環境に問題がある子が起こした罪に関して、裁くべきか、情状酌量をすべきか

きっとそれぞれのバックグラウンドによってバラバラで、主人公とその周囲の人たちのように意見が割れていがみ合ってしまうんじゃないかな、と考えています

友人に貸したりしたら感想聞いてみたいっすね

 

子供は本当に純粋無垢か?

無条件に守るべき存在か?

狂気を抱えた子供は法で裁けるのか?

ここから更に

育つ過程で狂気を植え付けられた人間はどう生きればいい?

まで

物語が進むごとにどんどんと問いかけが増えていって、ずっと苦しいくらいの作品です

 

「秘密」シリーズの事件はずっとこうした問いかけを軸に構成されてきましたが、Season 0に入ってからは特に顕著ですね

Season 0は単編読みもできなくはないので、社会問題と絡めながら考察したい人とかに是非おすすめしたいです

 

 

完結作品部門「私の正しいお兄ちゃん」

女子大生の理世は生き別れたお兄ちゃんといつか再会して一緒に暮らすのが夢 バイト先のスーパーの同僚・海利はお兄ちゃんと同い年でどことなく兄と似ている

「お兄ちゃんが大人になったらああいう感じなのかなあ」

夜眠れないという海利に肩を貸すうちに惹かれていくが、ある日海利のアパートで見つけた日記を読み、海利が人殺しだと知ってしまう


作者さんの昔の作品「白磁」が大好きでした

ただ、女子高生と成人の恋愛に対しては、発表時('08〜'10年)の世間はまだ許容されてましたが、今は大人側の倫理観が発達して許容されなくなってきてると思います 人にすすめにくい作品に化けてしまって悔しいようなホッとしているような……… そもそも私も最初に読んだときからだいぶ年を重ねましたし、そういう変化があっても仕方がないよねぇ………………(当時14,5歳だった気がする)

 

サスペンスの側面がかなり推されていますが、サスペンス読みまくってる人的には警察の対応が甘々に見えちゃうのでは?と少し危惧しています

どちらかというと家族ものというか、家族の定義を考えるみたいな側面のほうが濃いと思います あと贖罪

 

主人公の理世ちゃんは当初「お兄ちゃん」が心の拠り所で、その兄との幼い頃の思い出がある「あったかいおふとん」が落ち着ける場所なのですが、その「お兄ちゃん」と「おふとん」が物語が進むごとに変化していきます

殺人を許す許さないという葛藤もあるので、理世ちゃんの感情の移り変わりがわからないと読者を納得させられないと思うんですが、象徴的なものを使ってそういった推移がわかりやすく表現されていて、わかりやすくて読みやすい良い作品だなと思いました

 

後半、物語に都合の良い歯車が突然登場!って感じで新キャラが出てきたり、明らかに主人公サイドではない人が都合のいい動きをしてくれたりしてご都合展開すぎるな…と一瞬思ったのですが、各人それぞれに思惑があって利害が一致してああいう展開になったんだなとも納得がいきます 各キャラクターの性格がしっかり決まってるんですね たぶん

 

物語が展開されていく舞台が三重県で、もう1つ出てくる舞台も富山県、という絶妙なローカル感も良かったです……というと誤解を招く気がする

都会だったらもっと人が沢山いてこんな出会いは無かったと思うし、逃げたり気を紛らわす娯楽がたくさんあったりするので同じ物語の転び方はしないだろうと思います

とくに主人公たちの住む津市の舞台設定はかなりしっかりされていて、背景や主人公たちの行動にリアリティが感じられました 今年FODで配信されたドラマも津をロケ地にしたのかな〜………?

 

4巻完結で長くないので手を出しやすかった!ドラマには手出してないんですけど構成しやすい長さだったんじゃないかなと勝手に思ってます

 

 

 

連載中作品部門「消えた初恋」

主人公・青木はクラスメイトの橋下さんに片思いする普通の男子高校生 ある日橋下さんに消しゴムを借りたところ、ケースの中に「イダくん」と書かれているのを見つけてしまい、さらにその消しゴムをクラスメイトの井田に見られてしまう 井田は青木が自分のことを好きだと勘違い でもそれから青木は井田のことが気になるようになってーー

 

ジャニオタにわかりやすく言うとめめちゃんとみっちーがくっつく少女漫画ですね


連日耳に流れ込んでくる初心LOVEの圧(圧言うな)がすごくてドラマ観ようか迷ってる時に親友ピが漫画を読んだ感想がTLに流れてきてついに手に取りました


親友ピは

「同性愛異性愛問わず恋愛モノは色々読むけど、少女マンガは男女の完全な友情は不成立になりがちで残念だなって思ってた 消え恋は恋愛も友情も性別問わず成立してて自分が読みたかった少女マンガってこういうのだったのかもしれない(大意)

と言っていて、親友ピがそんな風に褒めるならアテも読むしかないやろがい!!!と泣きながらレンタルに走りました レンタルですまんご

少女漫画は男女の友情が不成立になりがちって印象が親友ピの中にあるのが少し残念で「成立するのもアルヨー!」って叫びたくもなるが、たしかに現代学園モノなんかはそういう節あるので自信持って否定しには行けない

あと井田くん目黒すぎって言ってた わかる

 

閑話休題

ドラマの感想でも見たけど登場人物がみんな優しすぎる………!!!まず青木くんは好きな子に消しゴムを借りたらそこに別の男の名前が書いてあって玉砕しちゃったにもかかわらず、その消しゴムのせいで井田くんに勘違いをされても「橋下さんの秘密をバラすわけにはいかない」と黙って勘違いを受け入れるとても優しい子 八つ当たりでバラしたりしない

井田くんは突然クラスメイトの男の子が自分のことを好き(勘違いだけど)と知っても引いたり避けたりせずきっちり気持ちを受け止める真摯な子です

青木くんの友人である橋下さんとあっくんも、青木くんが井田くんを好きと知っても応援モードで、ほかの登場人物もややそれに準ずる姿勢でした

みんないい子すぎるよ〜〜

 

でも決して同性愛に対して偏見のない理想郷でもなく、あっくんも最初は「青木と井田が?ないわ〜笑」という態度で、後に本当に青木くんが井田くんを好きと知って「青木が傷つくようなことを言ってしまった」と反省するという心境の変化がありました もしかしたらあっくんもこうして身近に同性に恋する友達がいなければ偏見に満ちた言葉を無意識に振りまいていたかもしれません

この理想郷のようでありながら現実も練りこまれているという塩梅が絶妙で、こんな世界が近いうちに叶うかもしれないという希望を感じさせてくれるのがとても素敵な作品だと思います

あと登場人物が高校生っていう若者だっていうのも大きい 今時の若者ならこれくらい柔軟かも?って思える 自分がとっくに高校を卒業している歳だからそう思うんだろうか 別マは意外にもメイン購読層は20代後半らしいので同じように思ってる人たくさんいるのかな(単行本は知らん)

 

そもそも同性愛ものと異性愛ものはレーベルを分けて連載・出版を行うのがスタンダードな中、この作品は君に届けアオハライドなどの王道少女漫画で有名な別冊マーガレットで連載されています

しかも別マの専属作家さんが作ったネームから連載に至ったわけではなく、原作者さんが持ち込んだオリジナルの同人誌を編集さんが連載にしようと言い、編集さんが他の編集部に相談しようとしていた時に別マの編集長が別マ連載にGoを出した、という経緯があるそうです

ティーンの男女(それも別マ=非ファンタジーの学園モノが多い雑誌)が恋愛をする作品がたくさん載っている雑誌の中に、当たり前のように男子高校生2人の恋愛模様が載っているのは、かなり意味のあることだと思っています 同性愛がとってもレアで違う世界のものではなくてこの世にあふれるたくさんの恋愛模様の1つだと読者に感じてもらえるきっかけになるかもしれないからです

今回ドラマ化で話題になったときにも、BLだって情報だけで「じゃあ自分はお客さんじゃないな〜」って思考停止する人がそれなりにいるようだと感じたのですが、その思考停止をせず、別マの読者がたくさんある連載作の1つを読むように、たくさんある恋愛ドラマの中の1つとして観てほしいな〜と思いました そしていずれ異性愛以外の恋愛も、たくさんある恋愛の1つだと思える人がたくさんいる世界になったらいいなって思ってます

 

 

新作部門「ジーンブライド」

仕事相手からのセクハラ、変質者との遭遇など、女であるゆえの生きづらさに日々新鮮に絶望する主人公・依知 ある日、元同級生の蒔人が訪問してきたことをきっかけに、「学園」時代の記憶にふれることが増えてゆく マイペースな蒔人に、依知は脅かされるどころか助けられ、依知もまた蒔人を助けるようになる

そんな中、「学園」の生徒と街でばったり出会うのだがーー


ネタバレしないようにめっちゃがんばってあらすじ書いたんだけど多分全然上手くかけてない!!!!!!


1巻発売時にかなり話題になりましたね

試し読み等で繰れるページではジェンダーについて描いた漫画だということが全面的に出ていて、手をだしづらいなって方がいそうだなって印象を受けました

しかしね、なんとね、1巻ラストでドカンと変わるっていうか……あっ、それだけじゃないんだ!って期待させられるような展開になるんですよ!!!!

これはネタバレになりかねないのですが、作者さんのインタビュー記事には「SFとジェンダーは相性がいい」と記されています

SF×ジェンダーなんですよ

ジェンダーだけじゃないんですよ


デジタルのお絵かき環境もSNSも発達した今、テキスト、あるいはブログ、もしくはイラストと、色んなものを個人から発信できるようになりました そんな環境ですから、こんな性被害に遭いましたとか、女であるから男であるからもしくはそうではないからこういう不利益を負ったとか、そういった漫画は毎日のようにバズっていますーーいっそうんざりするくらい

それらのエッセイ的な漫画は、描き手の持つ辛さの存在を読み手に伝えたり、同じ気持ちを持つ人の慰めのためにあるのかなと思っているのですが、それだと読後、物語を読んだ!というよりメッセージを受け取った!という感想になりがちなんですよ 私は

 

ジェンダー論を敬遠する人もいると思います

興味ないって人もいると思います

そんな中で、ジェンダーだけが中心な訳でなく面白い漫画が出版されて話題になるのは意味があるなと思いました

しかもSF!!若干ジェンダーと相性悪そうなのにありがちな恋愛もの(偏見)(苦笑)ではなくSF!!!

先程あたかもラストで急にSF展開が来たかのように書きましたが、1話からずっとポロポロポロと伏線、もとい部品が散りばめられていて、「なんだこのワードは」と思いながらスルーしていたのがラストで合体してパンチマシーンに化けてアッパーかまされるみたいな感じでした

この構成力だけで一読の価値あり!な作品なので(何様?)これもまた、「ジェンダーものか、お客さんじゃないな」と思考停止せず読んでほしいと思いました

 

 

Web漫画部門「タコピーの原罪」

宇宙にハッピーを広めるため旅をしているハッピー星人のタコピーは、降り立った地球でしずかちゃんという小学四年生の女の子と出会う ハッピー道具を駆使してしずかちゃんを笑顔にしようとするタコピーだが、しずかちゃんが笑わない原因はお友達との仲が上手くいってないからみたいでーー

ハッピーしか知らないタコピーが、地球の少女の苦悩を知って奮闘していく物語

 

12月に突如現れた新星

これを読む1週間ほど前に同じ作者の「ヒーローコンプレックス」を読んでました 「ヒーローコンプレックス」の感想としては、令和っぽくもあり王道少年漫画っぽくもあり、っていう感じ?

この作品は「ヒーローコンプレックス」と比較して鬱展開多めのSAN値ゴリ削り系漫画です

 

家庭環境と学校での人間関係に問題がありすぎるしずかちゃんと、そんな事情を全然しらないお花畑宇宙人のタコピーのお話です

しずかちゃんの事情を何もわかっていないお花畑脳のタコピーは、最初は「お友達とケンカしたっピ?仲直りするっピ!」と綺麗事を述べていてイラッとくるキャラクターなのですが、後にしずかちゃんの苦悩を知りたいと思って自主的に動いてしずかちゃんの周囲の人間の悪意を学習するようになります

ちょっとネタバレになりますが流行りのタイムリープもので、しずかちゃんが笑顔になれるようにタコピーが何度も7日間(ここで宗教に詳しい人は反応するらしいですね)を繰り返すんですよ ただ、献身的に見えてタコピーも自己保身はしっかりしているところは安心するようなイラッとするような……

しずかちゃんをいじめているまりなちゃんにも事情があり、10歳かそこらでこの事情があるならしずかちゃんを憎むのも順当かなと思えるようになっています

「いじめはよくないけどいじめている側にも事情があるよね…」「は?いじめる奴が100悪いだろ」とコメント欄で殴り合いが繰り広げられるところも含めて地獄の作品です 令和ですね

短期連載らしく、12/31にようやく4話が公開されるのでネタバレ避けると書けることが本当に少ない

コメ欄や考察含めてヒリつきをリアルタイムで楽しみたい方は今すぐ、安心が約束されてから読みたい方は少し完結を待ってからぜひ読んでください

*1:秘密 Season 0 1巻参照

*2:秘密 1巻参照